パールハーバーで展示されている「回天」に想う
- sutoband
- 2014年9月19日
- 読了時間: 2分
パールハーバーは現在、展示のほとんどが民間委託されていた。有名なアリゾナメモリアル(1000余名の乗員とともに沈没した戦艦アリゾナの上に建てられている)も以前は見学無料だったと記憶するが、今では愛国心発揚にもお金を取るらしい。アメリカ人観光客の人気はJAPの船を何十隻も沈めた潜水艦だ。その傍に、人間魚雷の回天が展示してある。まあ、誰も見ない。たまに東洋人やマニアが写真を撮りに来る程度だ。
なぜ回天がここにあるのか?それは言うまでのなく、戦利品だからだ。歴史ではなく、戦争に勝った証としての展示物だ。ここだけでなく、アメリカ各地で、それは常に美と愚の対比というかたちで展示されている。
特定目的のために全ての無駄(?)な要素を切り捨てた船体には、一種の構造美があるのを否定できない。 しかし、ただでさえスペースの無い、潜水艦に搭載するという無理な設計から、回天の潜行は安定せず、実戦いぜんの訓練中に多大の事故と犠牲を生み出した小型潜水艇を日本は「回天」と命名した。明治維新の回天の偉業から採ったものだろう。このような空疎な命名こそ、日本の当時の軍と政府の幼児性と精神的な貧しさを示すものに他ならないと思う。
こうした標語つくりこそ、日本を誤った方向に引きずりこむ日本社会の欠陥に他ならない。敗色濃い戦況の中で、制空権も、制海権も資源も無いなかで、生還を一切予定しない潜水艦がなぜ「回天」なのか?
この「回天」の英語名が中央のプレートに貼り付けられている。「suicide torpedo」自殺魚雷...血も涙もない無情の翻訳だが、この訳のほうがいかに現実を説明しているかは明らかだろう。
アベノミクスや東京オリンピックの「おもてなし」そして連日連呼された「絆」も、その現実と実態からかなりかけ離れたものに思える。日本は言霊の世界と言ってしまえばそれまでだが、こうした現実離れした美しい標語や命名にこそ、日本社会の本質的なリスクが潜んでいると思えてならない。
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