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オーストラリア・シドニーでのテロ事件がなげかける課題

12月15日に発生したシドニー中心部のコーヒーショップで発生したテロ事件は16時間後の翌16日午前二時に特殊部隊が突入し犯人を射殺、人質17名のうち2名が死亡した。犯人は96年にイラン難民としてオーストラリアに来たのち、オーストラリア政府のアフガン派兵や最近の米軍と一体化したシリアでのイスラム国勢力空爆に強い抗議を繰り返していたとBBCは報じている。イラン出身で典型的なスンニ派集団のISISの教義に共鳴しているのは、おかしな話だと思ったが、CNNによると、やはり過去にシーア派からスンニ派に転向したらしい。 

自称シェイク・ハロンとしてwebを通じて、彼の教義を宣伝していた50歳のテロリストMan Haron Monisは、オーストラリア兵のアフガン派兵に強く抗議し、街中でさまざまな個人でのデモンストレーションを行った映像が流されている。どの報道も、モニスとISISとの直接の関係を否定している。ISISとしても、このような中途半端なテロに自分の名前が出されることにいい気持ちはしないだろう。シドニーテロはハロンの単独犯のようである。複数犯だったら特殊部隊が突入した直後に人質に銃を乱射するだろうから、犠牲者は二名にとどまることはなかったろう。警察側も単独犯と軽武装を確認して突入したのだろうが、それでも二人の犠牲を生み出したことには批判がでるかもしれない。この事件はオーストラリア政府のテロ対応力のレベルを露呈させた。 

この事件が「イスラム教義自己解釈の一匹狼」だとしても、この事件の与えた衝撃は大きい。そもそもダウンアンダー(地の果て?)と揶揄されるオーストラリアはいくらアメリカと一体化した軍事行動をとっても、これまで直接の攻撃対象と認めて貰えなかった。

70名を超えるといわれるオーストラリアからのイスラム国参加者の存在そしてその3割程度が帰国しているといわれていることから考えると、このようなテロが発生するのは時間の問題だった。しかし、あらためてシドニーに着目してみると、テロ事件を起こしやすい状況がある。テロは、中産階級が暮らす静かな落ち着いた住宅地で発生することはない。やはり、都市の貧富格差が大きく、極端な貧困や矛盾のルツボのような地域で発生する。そこではより被害が巨大化し、メディアの注目が集まり、またテロを技術的に実行しやすいからである。 

ひるがえって、シドニーを見ると、まさにそうした状況がある。今秋、TPP会合の監視でシドニーを初めて訪れたが、一方では近代的な消費都市(その典型が中央部のオフィス街)、そこを歩く圧倒的多数の東洋人、その一方で白人しか出てこないテレビそして街角ごとの乞食。。。こうした社会矛盾の巣窟こそ、テロが最も標的としたい場所なのだ。 

おそらく、この事件に触発されて、ISIS系の本格的なテロが近未来的に発生するだろう。それはアジアのイスラム教徒の関係する可能性が高いと私は考えている。

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