top of page
検索

戦艦ミズーリはなぜパールハーバーに在るのか(3)-カミカゼが残した5cmのくぼみ-

  • sutoband
  • 2014年9月25日
  • 読了時間: 2分
ミズーリ5.jpg

大勢詰めかけたアメリカ人観光客がほとんど関心を示さない後部甲板の片隅にその掲示はある。

上の写真は、太平洋戦争の写真の中でも特に劇的な、沖縄戦の最中、ゼロ戦がミズーリに突入する瞬間の映像だ。 この時期にはアメリカ軍は現代兵器の先駆けとなる電子兵器やシステム的な防空システムを完成させ、上空からの突入はもう無理だった。特攻機はレーダーに発見されないよう、そして対空砲火のドームに引っかからないように、鹿児島から海面すれすれを飛行して突入した。

特攻機からすると、限られた視野の中で敵艦を発見することすら困難だったはずだ。 その中で弾丸の壁を突破してアイオワ級戦艦に体当たりしたこと自体、奇跡に近い。

搭載された爆弾は破裂しなかった(あるいは海中に落下していた)。鋼鉄の塊に、ジュラルミンと木でできた機体はそこに激突して5cmのくぼみを作った。それが今でも残っている。なぜ爆弾が不発あるいは海中落下したのかわからない。しかし、客観的に言えることは、空戦性能向上のために操縦席の防弾すら犠牲にして軽量化した機体に、250キロの爆弾を外装着すること自体が無理というか無意味だった。

サラブレッドの競馬馬に道産子レースの橇を引かせるといったら、みんな笑うだろうが、同じことがまじめに批判をゆるさず行われ続けた。 

最近、ゼロ戦を美化した映画や小説が脚光をあびた。ゼロ戦の初期の活躍はすばらしい。しかし、たちまち戦争の冷徹な合理性の壁に消耗していった。それでも過去の栄光が忘れられない日本は本土防空戦闘機の代わりに、空戦戦闘機を作り続け、そしてそれに重い爆弾をくくりつけて片道旅行に送り出した。長期の戦争遂行という視点からは、ゼロ戦は実は欠陥機なのだ。 

世紀の大成果を挙げた特攻機の操縦者は記録されていない。勲章も授与されていない。なぜか?日本は特攻の客観的評価を行っていなかったからである。

評価があれば、このパイロットは賞賛されただろうし、そもそも無成果な特攻自体が早期に否定されたろう。 突入箇所に残されたパイロットの上半身は、ウイリアム・キャラハン艦長によって翌日正式海葬された。艦長には日本人を代表して心からお礼を言いたい。 

特攻機が作った5cmのくぼみは、私の脳にも同じ深さのくぼみを作った。

 
 
 

最新記事

すべて表示
17名の犠牲者を出したパリ・テロの不思議

パリはテロ研究で何度も訪れた。それぐらいフランスとテロとの関係は深い。そこにはそれを実行する者も、取り締まる者も集まっている。そもそもテロリズムというのがフランスを始点とする概念だ。 それでも発生直後からこの事件に沈黙したのは、疑問点が多いことだ。技術的に言ってもパトカーへ...

 
 
 
オーストラリア・シドニーでのテロ事件がなげかける課題

12月15日に発生したシドニー中心部のコーヒーショップで発生したテロ事件は16時間後の翌16日午前二時に特殊部隊が突入し犯人を射殺、人質17名のうち2名が死亡した。犯人は96年にイラン難民としてオーストラリアに来たのち、オーストラリア政府のアフガン派兵や最近の米軍と一体化し...

 
 
 
今回衆議院選挙への不出馬のご報告

安倍政権の暴走とそれを阻止しようとすらしない野党の一強多弱構造の中で、まったく新しい政治の芽をつくろうと考えていましたが、突然のというか、社会的に許されない状況での安倍総理の自己都合解散によって、逆に選挙準備の整わない野党間で一挙に民主と維新の住み分けが進み、急転直下、野党...

 
 
 

Comments


Featured Posts
Recent Posts
Search By Tags
Follow Us
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square

NOBUHIKO SUTO & His BAND

DEMOCRACY FOR TOMORROW

 

© 2014 by Sutoband.info(首藤信彦&市民政治バンド)

Follow Us
  • Facebook Black Round
  • Twitter Black Round
  • YouTube Black Round
bottom of page