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モスル陥落は何を意味するか?

BBCをはじめ国際報道が驚愕のニュースとしてISISによるモスル占領そしてティクリットからバクダッドへの侵攻を報道し続けている。ISISといってもトヨタのミニバンでも古代エジプトの神でもない。サラフィー・ジハード主義集団「イラクとシリアのイスラム国」のことだ、と説明しなければならないほど、つい最近までこの動きは新しく小さなものだった。この武装組織がヨルダンからバクダッドへ入る要衝のファルージャを占拠したときにも、国際社会は驚いたことはまちがいないが、それでも、弱体化した政府治安部隊の間隙をぬって一時的に占拠に成功した...としか考えなかったのではないか?

しかし、北部油田地帯とも近いイラク第二の都市であるモスルの陥落は、この武装勢力の持つパワーを国際社会は改めてというか、初めて本当に理解したのだろう。政府軍でもこんな拠点を安易に手放すはずがないからである。BBCも映像からはこの組織が簡易チェックポイントを設置して、PCのデータを使って逃亡する民間人にまぎれて脱出するセキュリティ責任者を拘束し処刑する状況が読み取れる。要するに、この組織は単なるゲリラ組織ではなく、近代的な手法で占領地の行政能力を発揮しているのだ。

同様に映像はイラクの占領地から政府軍が放棄した兵器をシリアへ転送していく姿が映されている。膠着化したシリア政府反政府勢力の状況の中へ、大量に蓄積されているイラクの兵器が流れ込めば、状況はまさに政府反政府勢力の均衡を崩すものになるだろう。まさか、いかに無能無気力のオバマ政権としても、この状況を座視することはないだろうし、また皮肉なことに、バシャールを支えるイランもロシアも座視するわけにはいかない。しかし、もしISISの動きがそうした大国の反応の間隙を縫って急侵攻すると、ひょっとしたら、この地はまさにイラク、レバント(シリアなど)を中核とする新たなイスラム国家が成立するかも知れないのである。

これまでジハードは次第に自爆テロのような限定的な手段や主張に矮小化されてきた。この地で国際社会から評価されたのは、ジャスミン革命のように「アラブの春」の「民主化」だった。その幻想が薄れるなかで、現実に社会を変えつつあるこの勢力がどのような政治的、軍事的そして精神的な影響をもたらすのか、中東の状況は新しい次元を迎えつつある。

〈参考リンク〉

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