戦艦ミズーリはなぜパールハーバーに在るのか(1)

それは言うまでもなく、その舳先にあるアリゾナ・メモリアルにある。1941年12月の真珠湾攻撃時に1000余名の乗員とともに沈み、いまなお海中から重油をもれ続けている戦艦アリゾナが、アメリカの太平洋戦争の犠牲のシンボルなら、1945年9月に艦上で、憎むべきジャップを降伏させ、衆人環視の下で降伏文書に署名させた戦艦ミズーリはアメリカの勝利と栄光のシンボルであり、いまなお海中に残された乗員に「このようにジャップをやつけましたよ、安心してお眠りください」という慰霊のメッセージなのだ。
私は別にそうしたアメリカの意図を批判しているのではない。これが軍事の政治の常識であって、多くの国がおなじようなモニュメントをもっている。アメリカは終戦後70年近くなって、まだその記憶を忘れない...どころか、リニューアルしている。それが次に出現する新たな敵に備える道なのだ。実は、アメリカ海軍は日本の港に入港するときに、硫黄島陥落や沖縄戦勝利のように、アメリカ軍がジャップを破った日を選んできて、それより早くついた時には、わざわざ沖合いに一泊してからその記念日にあわせて入港している...と昔、外務省の高官から聞いたことがある。
別にそれを非難しても始まらない。それは所詮、アメリカの意思だ。問題なのは、「アメリカはまだ太平洋戦争を忘れず、記憶し続け、さらにいつかまた日本と敵対する可能性に常に準備している」という現実だ。日本がアメリカと衝突するなんて...とノウテンキな日本人は笑うが、アメリカは真剣なのだ。そう考えると、戦艦ミズーリをわざわざハワイまで持ってきて、あの位置に繋留しておく「呪術的」意味の一端が理解されると想う。
社会起業家(チェンジメーカー)首藤信彦の日常活動とその仲間たち
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