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虚妄の集団的自衛権行使容認と現実の脅威
July 2, 2014
首藤さんは専門家だから、集団的自衛権行使容認についてもっと発言したらどうですか...とよく言われるが、正直あまり乗り気ではない。というのは、この論議はどこか嘘くさいところがあるからだ。
7月1日の閣議を受けて、2日の新聞各紙は「戦後の安保政策転換」と書いているが、実は、この閣議でなくても、本当に軍を動かさなければならない事態が発生した直後の緊急閣議でも同じことができる。
いや、今回の閣議があるから、いよいよ自衛隊法改正を含む諸法制の改正がスタートできるのだ、と言う意見はもっともだが、現実に事態が発生したら、法はいくらでも解釈を変えることができる。むろんそれを是認するわけではないが、法というものはそうした性質のものだ。福島原子力災害対策時を思い起こせば、その論理がわかるだろう。
それなら、なぜ今、通常国会のほとんどをつかって、この問題が議論されるのか?実はそれが不思議だ。野党も、いや与党も、与党まがい野党も、マスコミもすべてその仕掛けにひっかかって、いやマスコミこそがこの問題のフレームアップに最大の力を発揮して、連日議論が報道された。不思議なのはその議論に、専門家が登場しないことだ。
この問題は軍事と外交の接点にあり、両方の分野に専門家がいるはずだが、まったく登場しない。議論は「これはどうかな...」と思うような幼稚な容認主義者と、「9条を守れば平和」」みたいなすれ違いで、現実・現場を想定した議論はほとんどないと思う。第一次湾岸戦争、第二次湾岸戦争、イラク・アフガン危機と議論に参加した体験からそう思う。
軍事関係者は別にテレビ局に呼ばれなくても、職域や定年退職後のJOBが広がれば、それでいいと沈黙しているのかもしれないが、あまりにひどいポンチ絵に、多少は「それは可笑しいんじゃないか?」と専門的知見から声を上げてほしいものだ。要するに、この問題の仕掛けを考え、演出している側からは専門的議論をしてほしくないのだ。
また、安倍総理は集団的自衛権行使容認しても、イラクなどには派兵しないということだが、それならどこに派遣するのか?アフリカや地球の裏側ではあるまい。集団的自衛権と言っても、同盟国と銘打っているのはアメリカだけだから、内容はアメリカ軍との協働権(義務?)ということだろうが、それなら対象地域を含め、具体的な行使可能性は提示しなければならない。一体なんのためにこの閣議が必要なのかは謎だ。
一つの仮説は、安倍首相というものが戦後史をひっくり返すような偉大な政治家であることに証明のために、つまらぬ議論をフレームアップしている可能性だ。これはよくわかる。二世三世議員はなんとかして「父を祖父を超えたい」という強烈な意識を持っていて、それは外部の人にはわからない。
もう一つの仮説は、本来、今回の通常国会で議論しなければならないはずの「経済運営の失敗」からの目くらましだ。異次元の通貨発行を行い、円安を誘導しても進まず、その円安の中で輸出は伸びず、輸入だけは直接の影響を受けて貿易赤字が進行。株価も期待されたレベルまで上がらず、ついに最後のよりどころである年金にまで手をだして株価維持策(PKO)をするありさま。TPPは漂流を始め、成長戦略の柱となるべきものは見当たらない。日本の先端技術だってSTAP細胞事件でその危うさが知れた...
本来なら、安倍政権の主柱であるアベノミクスの功罪こそ、国会を通じて論議すべきであった。しかし、予算はやすやすととおり、予算委員会ではまったく幼稚な架空の防衛論議が議論すれ違いのまま時間切れとなる。これほど苦境をかかえる安倍政権にとって目くらましの甘いテーマはないのかも知れない。
最後にもう一度くりかえすが、安全保障問題、いや、防衛問題は、そもそも集団的自衛権の前に自衛権すなわち「自国の防衛はどうあるべきか」と言う問題に国民的なコンセンサスを必要とする。日本国憲法は当初においては自衛権の放棄すら想定していた。その日本が、どういう国を「同盟国」と定義し、その同盟国の「どういう行為」を自国の安全保障と一体化させるのか、そしてわが国への脅威とは一体何なのか? そのような基本的な議論を経ることなく、集団的自衛権行使容認問題はまったくの言葉遊びに終わってしまう。しかし、皮肉なことに、その皮相な議論のあるいは無議論の影響は、今後の日本の安全保障に深刻な脅威を与えることになるのである。
【参考リンク】
「集団的自衛権、黒幕の米国が考えていること-日米安保体制はますます米国の思うまま」
高橋 浩祐 :ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー東京特派員 (東洋経済オンライン)
http://toyokeizai.net/articles/-/41323
「憲法第 9 条と集団的自衛権―国会答弁から集団的自衛権解釈の変遷を見る」
鈴木 尊紘:国立国会図書館『レファレンス』2011.11
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/pdf/073002.pdf


