スノーデンの機密情報リークの背後にあるもの
この一年間のアメリカの国際政治や外交の舞台からの退場は、シリアにしてもウクライナにしても、たった一人の下級情報員のリークで引き起こされたといっても過言ではない。これほどのインパクトをもったスノーデンの機密情報リークそしてそれがどのように、ジャーナリストを通して世界に発信されたか、その経過を表した「暴露」が「amazon」で届く。
一挙に読み通した。彼がデル社員を偽装して日本滞在していたときに、彼の情報操作能力が飛躍的に高まったことを知り愕然。やはり日本に「その」訓練機関があったんだと実感。まあ、デルのPCなどは買わないけど、Gも雲ももうやめよう。
生涯を独房で過ごすリスクをなぜ20台の若者が敢てのりこえてリークしたのか、理解できなかったが、この中で、著者のグリーウォルドもそれを聞いている。つぎが彼の答え、まるで王陽明じゃないか!
「人間のほんとうの価値は...、その人が言ったことや信じるものによって測られるべきではありません。本当の尺度になるのは行動です。自らの信念を守るために何をするか。もし自分の信念のために行動しないなら、その信念はおそらく本物ではありません」
この本の第五章は「第四権力の腐敗」、ガーディアンにピューリッツアー賞をもたらした著者グレン・グリーンウォルドの激しい大手メディアへの批判に当てられている。これがジャーナリストというものだ。日本ではとっくの昔に絶滅した種がまだ世界には生き残っている。
*
たった一人で国際政治をひっくり返したスノーデンの「暴露」を読み、そこで彼が自分の精神遍歴の原点としてあげていたジョセフ・キャンベルの「千の顔をもつ英雄」をあらためて読んでみた。
「金枝篇」に匹敵する(といっては失礼か)キャンベルの神話学の代表作だが、それが映画スターウオーズの原点として知られなければ、一般にはほとんど知られること無く図書館にひっそりと住み着いたのだろう。
スノーデンはまた彼が数十年の人生を刑務所独房ですごすかも知れないリスクの恐怖を乗り越えて、機密情報のリークに乗り出した精神的な柱が、PCゲームの主人公であるとの話は、最初は「なんじゃこれ」と思ったが、後に、深く深く心の中に浸み込んでいく。正義や友情や献身などという概念がまともに論じられなくなった現代社会において、ゲームの主人公だけが、たった一人で巨悪やモンスターに立ち向かい、難局と死を乗り越えて正義を実現する....「なるほどね」と思う。
スノーデンのリークはアサンジとは次元の違うリークだと感じていたが、これまでスノーデンがなぜここまで特定の機密情報を求め、そのために遍歴し、そしてジャーナリストを伴にしてリークしたのか、ようやく彼の心の葉が一枚理解できたように思う。彼が行動ダイナミクスを神話に求めているなら、彼の究極の目的は、その帰還すなわちいつかはアメリカに戻ってくることではないか?と考えを馳せる。